2月14日のバレンタインデーとは、聖バレンタインの日という意味である。
海外においては主に、恋人たちが贈り物やカードを交換する日となっているが、日本では女性が思いを寄せる人へ、チョコレートを贈る日と定着している。
まぁ、この日本での習慣はお菓子会社の陰謀と言えばそこまでだが、それでも男性は心身ともに浮き足立ったりもするし、女性は本命の相手への思いを膨らませたりもする。
そして、ここにもバレンタインを目前にして一人の、乙女心を抱える『乙女』がいるのであった。


 乙女心とバレンタイン


「むぅ・・・何故だ・・?」
嫌な煙を立てながら鍋の中で焦げているチョコレート”だったもの”を見て真剣に悩んでいる少女が一人。
彼女の名は鉄乙女。
乙女という名とは裏腹にかなり強気な性格をしているが、それでも自称『乙女』(本人以外はあまり認めないのであくまで自称)であり、今は正に恋する『乙女』である。
去年の夏から付き合い始めた、恋人にして弟分の対馬レオへ、今年は想いを込めた手作りチョコレートをバレンタインに贈ろうとしていた。
まさしく『乙女』である。
と言うわけで、ためしに作ってみているのだが・・・。
「おかしい・・・チョコレートを鍋にかけて溶かすだけのはずだが・・・。」
ほとんどのことを見事やってのける彼女の数少ない苦手が料理である。
しかも、ただ苦手なだけではなく、致命的と言えそうなほどに苦手なのである。
最も、それも以前の話で、努力の甲斐あって今では料理も普通に作れるのだが・・。
しかし、今回のようなお菓子系統は初挑戦なので、難航しているのである。
どうやら、今回は鍋にチョコレートを直に入れて火にかけたために焦げたようだが、こういった場合はチョコは湯銭かけて溶かすものである。
まぁ・・最初はチョコを直火で溶かそうとしてプチ惨事を起こしたことに比べれば進歩したと言える。
「うぅ・・また材料を駄目にしてしまった。・・・はぁ、今日もここまでか。」
レオとは同棲しているので、彼にばれないよう夜中にこっそり作っているため余り時間は使えない。
結局、この日も材料を活かしきれずに終わってしまった。
「よし、明日こそは!」


―翌日(2/13・月)―
「今日も・・・失敗か。」
正直なところ、乙女の料理の才能は天性のものとしか言いようが無い。
無論、向いている方向マイナス方向だが。
「本当に困ったな・・休日も過ぎてしまったし。」
休日といってもレオは帰宅部なので、決まって外出するようは無く、この土日両日ともほとんど自宅にいた。
よって、チョコレート作成に費やせる時間は平日と変わらなかった。
日付はすでに13日に変わっている。
明日渡すとなれば、最低でも今日中には用意しておかないと厳しいだろう。
正直、このまま一人で作り続けても間に合わない可能性もあるが、かと言って市販品のプレゼント用を買ってくる気はなかった。
自分が愛してやまない男に、どうしても自分の手作りを渡したかった。
「こうなっては、しかたがないな・・。」


―翌日(2/14・火)―
バレンタイン当日
レオは朝から気分が浮ついていた。
何故なら、今年は例年とは違う。
去年までは、だれからチョコがもらえるか、など、楽しみ半面もらえなかったときを考えるとややビクビクものでもあった。
しかし、今年は自分の姉代わりにして恋人の乙女がいる。
彼女からチョコがもらえると確信を持つのは、決して自惚れではないだろう。
「乙女さん、おはよ〜。」
「あぁ、おはようレオ。今日はちょっと用があるからもう行くぞ。」
「ん、わかった。いってらっしゃい。」
乙女が家を早く出るのは別に珍しいことでもないので、とくに気にせずに見送る。
朝一番で乙女からチョコを貰えたら朝から気分も最高にハイってやつなのだが、とも思ったが、用があるなら仕方がない。
心はいたって浮ついたままである。
自信は余裕につながる、とはいい言葉だ。

夕方、授業も終わりレオは帰宅する。
今年は生徒会に参加などもしたので、成果は例年以上である。
もっとも、大体は義理であるが。
で、肝心の乙女からはまだもらっていなかった。
まぁ、乙女さんのことだから学校では渡さないだろう、とはレオの言である。
そんなこんなで乙女の帰宅を待つレオ
「ただいま〜。」
と乙女が帰ってくるまで待った時間は短かったような長かったような。
待ち遠しい気持ちは時間の感覚も麻痺させる。
「レオ・・その、今日はバレンタインだな。」
そう言った乙女は少し顔が赤い。
「うん。そうだね」
「レオは誰かからチョコ、もらったか?」
「まぁ、乙女さんほどじゃないけどね。」
苦笑しながらレオが答える。
姉御肌な乙女は同姓からは特に人気があり、今までもバレンタインの日は何かとチョコレートを渡されていた。
「そ、そうか。生徒会のみんなからはもらったのか?」
「一応、姫や佐藤さんからもらったよ。それに、今年は例年よりかは多めに貰えたかな。」
レオに対する異性の評価は悪くない。
だから時々、学校で女子がレオにアプローチをかけているとも思える行動を見るとなんともいえない気分になる。
今も、ややそんな気分だった。
所謂、嫉妬というやつだ。
意外な独占欲の強さに乙女は時に悩んだりもするが、レオに対する想いは止められるものではない。
「そうか、それは・・よかったな。」
「ん〜、それはどうだろ。」
「えっ・・?」
意外な返答に一瞬戸惑った。
「だって、まだ乙女さんからもらってないからね。乙女さんから貰わないうちは、今年のバレンタインは良かった、なんて言えないよ。」
「レオ・・・。」
「逆を言えば、乙女さんから貰えるならそれだけで、俺はとても幸せだよ。」
胸や顔が熱くなるのが乙女自信にもわかる。
「まったくお前というやつは・・、いつもそうやって私を喜ばせる。」
そう言って、かばんの中から、綺麗にラッピングされた包みを取り出した。
「それでは、かわいいお前に私からのバレンタインプレゼントだ。」
「ありがとう。」
そう言ったレオの声は多分に嬉しさを含んでいた。
包みの中には、少し大きめでややいびつな、しかし溢れる愛情をよく表しているハート型のチョコレート。
その上には、これもまた少しいびつだが、『レオ、大好きだ』とホワイトチョコで書かれていた。
「これ、もしかして・・。」
「あぁ、私の・・手作りだ。」
「そっか。とっても、嬉しいよ。乙女さんの手作りだしさ。」
「実は、私一人で作ったのではないんだ。」 先日、進退窮まった乙女は最終手段としてこういうのが好きな友人に助けてもらっていたのだ。
割と乙女は意地っぱりなところもあるので前日まで一人で頑張っていたが、レオのため、ということで友人のところに行ったのである。 「昨日、友達の家に行って、所々助けてもらって作ったんだ。」
「なるほど、それで昨日は帰るのが遅かったんだ。」
「ちょっと、恰好悪いな。」
少し恥ずかしそうに乙女が言う。
「そんなことないよ。乙女さんが一生懸命作ってくれたんだから、恰好悪いことなんか無い。」
「実は、味見もしていないので、少し不安なんだが・・食べてみてくれないか。」
「ちょっともったいない気もするけど、ありがたくいただきます。」
レオが一口チョコをかじるのを、乙女は緊張しながら見守っている。
「・・どうだ?」
「うん、もちろん美味しいよ。」
「本当か?」
「本当だって。だったら乙女さんにも食べさせてあげる。」
「え?」
本日二度目の戸惑った返事。
一瞬、乙女が戸惑った隙にレオが距離をつめ、顔を近づけ・・・。
二人の唇が、重なった。
「ん・・。」
そのまま、キスをしたまま、レオの口から乙女の口へチョコが口移しで渡される。
レオがゆっくりと唇を離す。
「ね、甘くて美味しいでしょ。」
乙女の口の中には甘い味が広がっていた。
少し上気した表情で乙女が口を開く。
「たしかに甘かったが・・半分はレオの味だったな。・・・だから、もう一回。」
「もう一回と言わなくても、俺は何度でもいいよ。」
「レオのために作ったのだから、お前が食べないとだめだろ。だから、もう一回だけだ。」
「そうだね。それじゃあ、もう一回。」
もう一度、キスをする。
ただひたすらに甘かった。
口移しで食べるチョコも、この口づけを交わしている恋人の唇も。
でも、こういうのもたまにはいいな、と乙女は思った。
何故なら彼女は恋する『乙女』そのものだから。


〜Happy Valentine〜




後書き
きっとみなさん初めまして。そうじゃない人もここでは(きっと)初めまして。さらにそうでもない人、本当にお久しぶりです。
自分のHPでは約4年ぶりの復帰(?)作
が、なぜこんなことに!!(笑
そもそも、何故につよきす!?(A.書き出す3日前からやってるから)
おかしいな・・Fateか東方で行こうとおもってたはず(何!

とりあえず、本題に・・・
まぁ、お約束といえばお約束なバレンタインネタですが、どうだったかな・・
正直、文体が妙だったり、話のつながりが妙だとかあるかもしれませんが、正直いっぱいいっぱいです。(現在15日午前二時)
甘々な感じが目標でしたが、どうなのやら(汗
なにかと力量不足なので、感想などいただけると嬉しいです。

とりあえず、今年はまともに活動が目標なので頑張っていこうと思いますが、つよきすでまた何か書くのかな?
とりあえず今回はここまでで、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


戻ります


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